小太郎が死んだ。
小太郎が死んだ。
小太郎は実家で飼ってる犬だ。
腎臓の病気で身体中に毒素がまわってしまったらしい。
本日火葬され、共同墓地に入る。
十六歳だった。
火葬してもらうまでの間にゆっくり
今日までの思い出を書いていこうと思う。
小太郎が家にやってきたのはゴールデンウィーク。
近所のスーパーの催事でペットショップのワゴンがやってきた。
私と弟がいくら頼んでも飼ってもらえなかったのに、
母と妹が頼むとすぐに父は承諾し、皆で犬を見に行く事にした。
母と妹が欲しかったのは茶色いトイプードル。
これぞトイプードルと言った風貌の可愛らしい子であった。
元気に跳ねる可愛らしいトイプードルの横で
角で丸くなっている黒い塊。
生後1ヶ月立ってないと言う塊。
よく見るとその黒い塊は口元と足だけ白い。
その頃、私が欲しかった犬はシュナウザー。
模様が何処となくシュナウザーのようなところが気に入り
「この子が良い。」
と、少々駄々をこねたのを覚えている。
結果、誕生日の近い私のプレゼントの意味も含め
黒い塊がうちにやってきた。
名前は小太郎。
当時ハマっていたゲームのキャラクターからとった。
それからは部活が終われば一緒に散歩に行った。
リードの長さを調節しても、何をしても
二足歩行で歩く姿が少し恥ずかしかったが、
念願の犬、念願の散歩が嬉しく、毎日散歩に出た。
先に散歩に行かなくなったのは小太郎の方だった。
一年ほどで、歩くのを嫌がり抱かれたまま家の周りを回るだけになってしまった。
そこから一年ほどで完全に外に出る事を拒否する引きこもり犬が完成した。
「散歩行こう」と言うと自室に入り隠れる。
外に出してもその場から動かない。
病院で診てもらっても特に悪いところはなく
本人の希望だと、無理に外に誘うことも無くなった。
小心者の小太郎は、知らない人の足音がするとすぐに吠える。
ただし、腰は引けている。ビビリだ。
家族が大好きな小太郎は、常に人の膝に乗りたがる。
昔、妹が母にひどく怒られた日があった。
母は怒鳴り声をあげる。
すると寝ていたはずの小太郎が飛んできて
妹の前に立ち、母親向かって吠える。
私が足を骨折して家で安静にしていた時も
膝の上に座り、ずっとそばにいてくれた。
父が倒れた時も狂ったように吠えて知らせてくれた。
皆の心が弱っている時はその人と一緒にいてくれた。
昨日母親から連絡が来た。
もう手の施しようがなく
後は家で最後をゆっくり待つだけだそうだ。
急いで実家に向かった。
ぐったりした様子で母親に抱かれていた。
殆ど反応はないが、時折
「お母さん」と母を求めていた。
私が実家を出て、弟が実家を出る。
しばらく空いて妹が実家を出る。
そうだ。
小太郎はずっと母と2人だったのか。
闘病中も、病院に連れて行ってくれたのは母。
最後まで小太郎のそばに居たのは母だった。
小さい頃はあれだけ一緒にいて
たくさんそばに居てくれた小太郎。
いつも弱っている人のそばに居てくれた小太郎。
私は小太郎にその分何かしてあげられてたのだろうか。
兄弟が家を出て行った時小太郎は寂しかったんだろうか。
目はもう見えなくなっているが、声だけは聞こえるらしい。
トイプードルらしくいつもは垂れている耳をしっかり伸ばして、
みんなの声を聞いていた。
交互にぐったりとしている小太郎を抱き、交互に仮眠をとった。
午前3時頃。
「小太郎…息してない…」
最後は母の腕の中で息を引きとった。
大好きな母の腕で最後を迎えられたのなら本望だろう。
最後まで耳は立っていてしっかりと家族の声を聞いていたのだろう。
もっと頻繁に実家に帰って来れたのじゃないか?
もっとたくさん遊んであげられたのじゃないか?
いつだって別れの時に後悔ばかり募る。
ただ、最後に小太郎にたくさんお話しできてよかった。
感謝をたくさん伝えられてよかった。
14時、小太郎を火葬するための業者が来る。
お気に入りのベッドにお気に入りの布団。
花で囲い車を見送る。
人間の葬式とは違い、ワゴン車に乗せられて運び出された小太郎。
たった30分で骨になってしまうらしい。
小太郎を乗せた車が走り出し、
火葬後の帰りを待つ。
庭でタバコを吸いながら、
ぼんやりと昔受けた授業を思い出した。
『ペットは家族か』
家の一員だからもちろん家族だ。
金で買った命なので家族ではない。
等、様々な議論が飛び交っていた気がする。
家族の定義の曖昧さを説く話だったとは思う。
一般的には、血縁関係や婚姻関係に基づき、同じ屋根の下で生活を共にする集団を家族と呼ぶ。
みたいな話だったとは思うが、
小太郎は確かに家族だった。
血の繋がりも婚姻関係もないが、
我が家の一員だった。
誰よりも家族思いで優しい
我が家の次男坊。
家に来てくれてありがとう。
天国で見守ってて欲しい。
家族の一員として一生を過ごしてくれてありがとう。
あの日、角で丸くなっていた黒い塊。
シュナウザーに似ているという理由だけで選ばれた塊。
あの日、選んだ犬が心優しい小太郎で良かった。
うちの子として生きてくれてありがとう。
小太郎はうちに来て幸せだったかい?
たくさんの思い出をありがとう。


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